「時々さ、息をするのも面倒になるんだ。」


何故がこんな事を突然言い出したのか、俺には分からない。


「うーん、じゃあ息止めちゃえばいいんじゃないかな?」


「それって遠まわしに死ねって言ってる?」


「そんな訳ないじゃん。」



は綺麗だ。それ故に、弱くて脆い。


今すぐにでも、俺の目の前からふっと消えちゃいそうな、そんな感じ。



「ねぇ、圭輔は私が死んでも傍にいてくれる?」


が『もー圭輔なんかいらなーい』とか言い出さない限り、ずっといるよ。」


「あはは、じゃあずっとだね。」



そう言って笑った君は、綺麗で、儚くて。


また俺は、明日にでもが消えてしまいそうな感覚に襲われる。



「ね、ぎゅってしていい?」


「しょうがないなぁ、圭輔は。」


そう苦笑しながらも、俺の傍に寄ってきてくれる。


俺より小さくて、ずっと細い体。


きつく抱きしめたら折れてしまいそうで。優しく、優しく抱きしめた。



君を何かに例えるとしたら、線香花火。
夏の間にしか咲かない幻の花。
ぼんやりとした光の玉が落ちるまでの短い命。


だから儚くて、美しい。なんてね。


でもさ、夏の間だけなんて言わないで?
明日も明後日もずっと俺の傍で咲き続けていてよ。
火が消えそうになったなら、もう一度灯してあげるから。


が傍にいてくれればいいんだ。


それだけが、俺の望み。





ふわりと香った君の髪の匂いを、いつまでも覚えていたいと思った、あの夏の日。






(優しいのに切なくて、儚いのに美しい。それが、君。)