、高校三年生。
私は、大きな迷路に迷い込んでしまいました。
「ねーえー山ノ井ーどーしよー。」
「うん。まともに喋ろうか。」
春の放課後の教室、なんとなくウキウキするシチュエーションだけど・・・それどころではない。
迷い込んだ迷路という悩みについて、高一の時から仲の良い山ノ井に相談中。
通称山ちゃん。ちなみに三年間同じクラス。
「だからね、私もう迷路に迷い込んじゃって・・・」
「迷路って何?」
「・・・恋が出来ません。」
そう、これが私の迷い込んだ迷路。名付けて”恋出来ない迷路”。
ネーミングセンスが無いとかそういう意見はノーサンキュー。
好きな人さえ、出来ない。そして、山ノ井の表情も読めない。
「私・・・このまま女として枯れてっちゃうのかなぁ・・・。」
「んー・・・そうかもね。」
なんて言ってケラケラと笑う山ノ井を睨む。
他人事だと思いやがってちくしょう!こっちは真剣に悩んでるのに!
「あ、俺そろそろ行かなきゃ。、耳貸して?」
「え?」
そう言って立ち上がった山ノ井に、耳元で何か囁かれる。
「 」
「――・・・っ!!」
それは、私を真っ赤にさせるには充分すぎる位で。
山ノ井は「俺、待ってるからねー」なんて、手を振りながら教室を出て行った。
ある春の放課後の教室。
この感情の正体に気が付くまで、あと少し。
―――・・・迷路の出口には、あなた。
(「そうだねー・・・俺なんかどう?ずっとのこと好きだったから。」)