「なー。お前は俺の事好きか?」
「え?何、もちろん。」
彼女が、俺を好きだと言ってくれた事がありません。
今みたいに聞けば「うん」と答えてくれる。
でも「好き」とは言わない。
俺が告白した時だってそうだ。
「好きです。付き合ってください。」と言った俺に対して
「はい。分かりました。」だったからな。なんだコレ、任意同行か。
・・・いっくら百戦錬磨の慎吾サンといえど、不安になる。
そして、俺は思い切って聞いてみる事にした。
一人で悶々と考えていても埒があかない。
「なぁ。なんでは俺の事、好きだって言ってくれねーの?」
昼休みの屋上。
その疑問をぶつけられた彼女は、明らかに動揺していた。
俺は更に不安になる。
俺にはさえいてくれればいいのに。
は、そうではなかった?
俺という存在は、大した存在じゃなかったのか?
苦しくて、苦しくて。
いっそのこと突き放された方がマシだと思った。
「・・・俺の事好きじゃないなら、無理して付き合わなくてもいいんだぞ?」
それが、俺にとって精一杯の言葉。
自分から好きになった女は彼女が初めてで。
失いたくない、世界一大切な存在。
どうしよう。俺、振られたら生きていけねーかも。
そして、が喋りだした。
「あのね、慎吾・・・あの・・・誤解なの!私がつまんない意地張っちゃったから・・・ホントごめん!」
・・・え?
呆気に取られたままの俺を差し置いて、彼女は言葉を続ける。
「慎吾の事大好きだから毎日でも好きって言ってあげたいけど、毎日言ってたらありがたみが無くなるでしょ?
そう思って言わないようにしてたら・・・いつの間にか言うタイミング見失っちゃって・・・
私、慎吾の事が大好きだよ。不安にさせちゃってゴメンね。」
・・・どうやら、俺の考えすぎだったらしい。
安心したら膝の力が抜け、その場にへたり込んだ。
・・・すげーかっこ悪い。でも、それすら幸せに思う俺がいた。
不安になったり、幸せになったり。
その言葉が持つ力は強大で。
恋人には素直になりましょう?
『好き』は、魔法のコトバ。