私は突然、ほんとにいきなりだけどその質問をぶつけてみたくなった。
「ねぇ。」
「んー?」
「利央ってアホなの?」
「はぁっ!?」
・・・そりゃそうだ。
誰しも自分がアホなのか、と聞かれて「ハイそうなんですアホなんです」とは答えない。
ぷぷ。利央すっごく面白い顔してる。きっとこういうのを”アホ面”って言うんだろうな。
なんて考えてたら、利央がおもむろに口を開いた。
「・・・んで、なんでそんなこといきなり聞いたの?」
「昨日ね、準サンが。」
利央はやっぱりか、とでも言いたげにため息をついた。
私は野球部のマネージャーで、しかも利央と同じクラス。
マネージャーという立場上、野球部の面々と関わる機会は多い。
そして昨日の部活の休憩時間に、一つ上で結構仲の良い準サンに呼び出された。
「・・・何ですか?」
「いい事教えてあげよっか。」
私の目の前に居る準サンは、いつになくゴキゲンで。
いい事って何だろ・・・なんて考えていた私を無視して話は続けられた。
「利央ってさ、アホなんだぜ。」
それだけ言って、準サンは練習に戻って行った。
・・・え?それだけ?
―――そして、冒頭の会話に戻る。
「―――・・・って事があったからなんだけど。」
「また準サン俺をバカにして・・・っ!」
そう言った利央は涙目だ。あ、可愛い。
思わずからかいたくなってしまった。・・・あれ?私ってSだっけ?
「で、アホなの?」
「アホじゃない。」
「アホなんでしょ?」
「アホじゃない・・・!」
「だからア」
「アホじゃないっ!!!」
いきなり勢いよく立ち上がった目の前の人物に、私は驚いた。
が、そんなに驚いている暇もなく、利央はそのままの勢いで喋りだした。
「もしかしてもずっと俺の事アホだと思ってたの!?
にだけはアホって思われたくなかったから頑張ってかっこつけてたのに!?
もー俺の努力は一体何だったんだよぉ―――!!!」
・・・否。叫んだ。
「え・・・っとあの・・・利央・・・?それって、どういう・・・?」
ドキドキとうるさい心臓を必死におさえて、それだけ言うのが精一杯だった。
多分、いや絶対今顔真っ赤だ。
でも、答えは聞かなくても分かってしまった。
・・・利央の顔も、真っ赤だったから。
「あ・・あ・・・あのっ!い、今のはなんていうか・・・その・・・!」
「仲沢利央っ!」
「は、はいっ!」
一息吸ってから、私は言った。
「私は、今まで一度も利央の事アホだって思ったことないよ。
・・・いつも、かっこよかったし。それに、どんな利央も大好きだから。」
それだけ言って、うつむいていた視線を元に戻したら視界が急に暗転した。
・・・それは、利央が私を抱きしめたからで。
「俺も、が大好きだよ。」
と耳元で囁かれたのがくすぐったくて、嬉しくて。
思わず「知ってるよ。」なんていじわるを言ってしまった。
そのままのあなた全部が好きだから。
ねぇ、もう一度目を見て「好き」って言って笑って?
あなたは、私の愛すべき人。