「あたしね、今日レズなんじゃないかって疑いが掛かったよ。」


「はぁ!?」


予想通りの反応。


やっぱり榛名って単純なんだ・・・って、あたしは秋丸の定説「榛名単純説」を痛感した。


秋丸も榛名のキャッチャーなんて大変だろうな。心底同情するよ、あたし。


要するに榛名は単純で、「はぁ!?」って言った時の顔がものすごくアホ面で、俺様至上主義な奴だってこと。


「どーいうコトだよ、それ。お前レズだったのか・・・?」


「んな訳ないでしょ。今日ね、お昼休みに友達と恋愛について話してたの。

 で、『って好きな人いるの?』って聞かれて、『いるよ。榛名。』って答えたら『え!?レズなの!?』だって。」



「・・・アホか。」



あたしの目の前の彼氏、榛名元希は心底呆れているようだ。


アホはお前だ、と心の中で毒づく。


キャッチャーの事を女房役なんて言うみたいだけど、野球以外での女房役を務めるあたしの苦労は計り知れない。



「だって榛名の名字が女の子みたいなのが悪いんだもん。」


「俺の名字にケチつける気か?・・・それに、将来この名字になんだぞ?お前。」


「え?あたしと榛名って結婚すんの?」


何それ、そんなの全くもって聞いてない。初耳だ。


例の如く、あたしの彼氏様は俺様至上主義を発動。


私の承諾も取らないままに決めてしまったらしい。



「そーだよ。お前は将来榛名になんの。」


「・・・両方名前みたい。」


「うるせーよ。」


全く、本当に自分勝手な奴。


そう思いながらも、口元の緩みが隠せない。


こんなやりとりも、あなたとならすごく楽しくて。



「今後レズに間違えられたくないなら、俺を名前で呼ぶんだな。」


「同じ名字になる事だしね、元希?」


やられっぱなしは性に合わないので、次はあたしが反撃してやった。


元希の弱点は、大体分かっているつもりだから。





「・・・お前、ソレ反則。可愛すぎ。」




2人して、赤い顔して笑い合って。


恥ずかしいくせに、冷静を装ってるあなたが愛しくて。



単純で、アホで、俺様至上主義な元希の事を、あたしはこれ以上無い位に好きなんだ。



あなたとのおそろい。


ストラップと、指輪と、それから”榛名”って名字。