・・・何?この状況。
社会の先生が風で休んでるとかで、急遽自習になった3時間目。
先生が居ない時にちゃんと自習している人なんてほとんどいなくて、教室はざわめいている。
そんな時、私の前の席に座っている男―、水谷文貴は、くるっと私に振り向いた後、こう言った。
「俺さ、さんの事が好きだよ。」
「・・・何?頭かどっか打ったの?」
「何それ酷い!俺大真面目に言ってんだけど!!」
「だってそんなの聞いた事ないし知らないもん。」
「当たり前じゃん誰にも言ってないんだから!」
幸いな事に、誰も私達のやり取りに気付いていない。
この人私の事好きとか言った?いやいやありえないでしょ。ないないない。
だって水谷文貴でしょ?何気に女子から人気があったりする人なのに。
―――・・・私を、好き?
「今さ、何でこの人は自分の事を好きなんだろう、って考えたでしょ?」
「え!?・・・何で分かったの?」
「そんなの当たり前じゃん!好きな子の考えてる事くらいお見通し。」
「俺はね、さんという存在も、雰囲気も、笑顔も、泣き顔も、何もかも。全部、全部が大好きなんだよ!」
そう言って、水谷君はふにゃっと笑った。
その笑顔が暖かくて、優しくて。
なぜか分からないけど、私の目からは涙が零れていた。
「――・・・っ、」
「え!?俺なんか言った!?えっと、えっと・・・ゴメンっ!!嫌・・・だった?」
「・・・ち、がうの・・・っ、すごく、嬉しかった・・・。私も、好き・・・」
これが、やっと言えた言葉。
嬉しくて、嬉しすぎて涙が零れた。
好き。私も、水谷君が好き。大好き。
ざわめいていたとはいえ、一定ラインの静かさを保っていた教室。
・・・そこに、水谷君の叫びが響いた。(しかもガッツポーズ付き)
「今日、部活いつもよりもっともっと頑張る!だから見に来てね!!」
そう言ってとびっきりの笑顔を見せた彼に、私は一生かなわないんだろうな、と思った。
どこが好き?そんなの言えないよ。
だって君の全てが好きだから!
言っても言っても足りない気持ち。
ねぇ、君の全部が好きだよ!