「ねー。ねぇってばー」
「・・・。」
「かまってよーねーえー」
彼氏が、最近冷たい。
彼氏こと阿部隆也と私は付き合って半年。
・・・しかも、未だキス止まり。そして最近はかまってくれないときた。
冒頭の私の問いかけも聞こえているんだかいないんだか、完全に無視。
奴は自身の部屋の床に座って野球雑誌を読んでいる。
これはマンネリ化、はたまた別れの危険性ありってことかい奥さん!
「この野球小僧め!隆也がそんなんだったらわたし、花井君と付き合っちゃうからね!」
なんで花井君なのかは自分でも分からないけれど。
ほら、なんとなく自分の頭に思い浮かびやすい人っているじゃない?
私にとってはそれが花井君だった、というだけの事。
あまりにも隆也が野球ばっかりで構ってくれないから、なんだかつまらなくて、つい口から出た冗談だった。そう、冗談。嘘。
――― 次の瞬間。
私の視界には、真っ白な天井さんがこんにちは。
つまり、隆也の部屋のベッドに座っていた私は、奴によって押し倒された形となる。
・・・顔が、近い。
「も、もしもーし?隆也さーん?」
「お前、自分の言った事に責任持てよな?ちょうどベッドもあることだし。」
そう言ってニヤリと笑った。
今の隆也は獣みたいだ。標的を見つけた狼。
今まで見た事の無い表情に、不覚にもドキッとしてしまう。
「そういう事はちゃんと結婚してからじゃないとダメって!お母さんが!」
「だからこうしてるんだろうが。」
「え?」
一体、それってどういう意味・・・?
「この時点で婚約しとけば、も花井のところに行ったりしねぇだろ?」
それはつまり―――・・・
「やきもちですか?ダーリン?おまけにプロポーズまでしてくれちゃって。」
つい、口元が緩んでしまう。
「なっ・・・!犯すぞコラ!!」
「え゛。冗談ですよ冗談。」
隆也顔真っ赤だ。可愛いなんて言ったら怒るだろうか。
そしてフッと優しく微笑んでから、
「が嫌がるうちはしねーよ」と、私の頭をなでながら言った。
・・・明日は空から槍でも降ってくるんじゃなかろうか。
約一ヶ月ぶりの隆也の優しさに触れ、幸せ気分いっぱいだった。
「えへへー隆也大好きっ!」
「はいはい。俺もを愛してますよ。」
言わなければ伝わらない想い。
ふとしたことで繋がる気持ち。
お互いの手をとって、繋ぎあって、私達らしくゆっくり歩いていきましょう?
それは、ある晴れた日の昼下がりの出来事。